今回は,QLTSのMCT(択一試験)の攻略法・対策について,私の経験を書いていきます。
1 予備校
MCTの対策には,予備校は不可欠だと思います。なぜなら,11科目について試験対策用として比較的コンパクトにまとめている本がほかに見当たらないからです。
また,QLTSの最高にヒドい点として,過去問が一切アップされていませんし,出回ってません。そこで,アウトプットとしては,予備校の練習問題や模試に頼るしかありません。
MCTの予備校としては,
- QLTS School
- QLTS Advantage
- Barbri
の3つが有名かと思います。
私は,全くわからない中で,電話相談をして営業上手だったこともあり,QLTS Schoolに決めました。
受講したのは,模試複数回(15回くらい?)と動画による解説に加えて,11科目の本がセットになったコースでした。(ただし,動画はテキストを読み上げるだけの退屈なものだったので,最初の2回程で見るのを辞めました。。。)
おそらく,QLTS Schoolが一番メジャーだと思いますが,他の予備校もOSCEとのセットパックを売り出しており,あまり優劣は付けられないと思うので,各予備校を比較検討して,一番良さそうだなと思うところで大丈夫だと思います。
2 実際の対策
QLTSのツライところは,NY Barのように先人が残した日本人ノートのようなものが出回っていないので,英語で対策せざるを得ないところです。ここがかなり負担感が強いところです。特に英語力が飛びぬけている場合を除いて,日本人弁護士だと,いくら日本法を知っているとはいえ,全く知らない英国法を,全ていちから,11科目勉強することが,めちゃくちゃ辛いです。
英国法の勉強って,結局のところ,日本法の枠や日本語での理解を踏まえてある程度の概略を掴むと,そこからは想像力も働かせながら,細部をどんどん詰めていける,というイメージでした。だからこそ,基礎知識が乏しい(LLMは海事・物流なので,全く関係ない)QLTS対策は,雲を掴むような日々が続きました。
もっとも,いや,だからこそ,さっと素早く全体を一周することが何よりも大事です。断言します。どれだけ時間をかけてじっくり読んでも,どうせ一周したころには1つ目の科目はほぼ忘れています。私も含めて,一部の天才以外は,皆凡人ですから。なので,記憶に定着させるためには,素早く,何回もまわすしかありません。
個別の対策ですが,実は,下記11冊の本(手引書を合わせると12冊)は途中で全て読むのを諦めました!!(衝撃!)
というのも,対策を始めたのが2018年10月で,翌年1月9日の本番まで14週くらいしかありませんでした。なので,計算だと,1週間に1科目を読了して11週間,残り3週間で2000問の練習問題と模試をこなす必要がありました。ここにLLMの予習と期末エッセイ(5000 words)作成が入ってくると,しっかり目に死ねます。。
ということで,かなり邪道ですが,予備校から提供されたサマリーノートを熟読し,簡潔すぎてよくわからないところを中心に上記本体冊子に当たる,というやり方で,何とか1週間で1科目を,(無理やり)まわすことにしました。
この11週間(10月から12月中旬まで)でMCTのために割けた勉強時間は,1週間当たり10時間~15時間くらいだったかと思います。土日のうちフルで1日と,平日フルで1日+細切れ時間,というところ。これは,あくまでLLMが本業という意識と,クラスメート,他の留学仲間,海事弁護士等とのネットワーキングに最低週2回は繰り出すという自分ルールがあったからです(ストイック―!)。
ちなみに,契約法だけは,下記の本を熟読するだけで挑みましたが,それでもある程度の対策になったと思います。さすが島田先生!(会ったことないですが。)
この11週の(雑な)インプットを終えた後,12月中旬から2週間で全練習問題(2000問程度)を解きながら,サマリーノートで復習+足りない知識を書き込んで一元化しました。このときから冬休みに入ったので週5・6日程度はMCT対策に充てていました。
年明けからは,LLMのエッセイの作成を3日くらいの徹夜で仕上げつつ,最後に模試を3回ほどだけやり,合格点ギリギリ(下)だったので,本番が最高の法則の発動を願い,1月9日の本試験を迎えました。
今振り返っても,上記が最低限必要な労力かと思います。スコアも余り余裕なかったです。もっと勉強してスコアも良い人もいましたので,それぞれの戦略次第かと思います。
3 試験本番
既に説明しましたが,MCTは,全180問の5肢択一試験で,特設会場にあるPCで全て回答します。
時間は,午前・午後,それぞれ2時間45分ずつで,各90問ずつに分けられ,間に1時間のお昼休憩があります。一問当たり約1分50秒でスムーズに回答しなければ間に合いません。
水だけ持込み可のほか,耳栓,メモ用紙・ペン,電卓が配布されます。
お昼は,辛気臭い会場でお弁当を食べてもいいし,外に出てもよかったと思います。
この約6時間の試験は非常にタフです。が,旧司法試験のときのように,本番が一番良問だったと思います。本番は素直な気持ちで解けば正解するという感じでした。模試のときは時間が足りませんでしたが,本番だけ,10分程度時間も余りました。
時間を喰うのが仕訳(簿記)の計算問題なので,これだけPC上でチェックマークをつけて飛ばし,残った時間でじっくり計算しました。この計算問題は,コツさえ掴めば,かなりの確率で正答を導けると思います。
4 最後にー対策の肝
結局,旧司法試験のときと対策方法はほぼ同じでした。
『選択と集中』,『アウトプットからのインプット』を軸にしていました。
『選択と集中』とは,手を広げすぎず,必要なコアの知識を見極め,これをひたすらまわすことに注力することです。どんな試験でも,必要なコアの知識の精度が高ければ,そこで基礎点を稼げるので,相対的に他の受験生に差をつけることができ,これだけで合格できると信じています(実際に,旧司のときもこの戦略で大学在学中に合格できました。)。重要なのは,コア知識の精度の高さです。ここを曖昧にすると,基礎点すら稼げません。逆にここが正確だと,些末な・発展問題(どうせ解ける人は少ない)については,しっかりした基礎をベースに少し考えるだけで,十分戦えるレベルの回答になります(択一・論文ともに)。
『アウトプットからのインプット』とは,とりあえず問題を解いてみて,そこで間違えた知識や何度も問われる重要な知識を,自分のコア知識となるサマリーノートに追記して,これを上記のとおりひたすらまわしてインプットする,ということです。過去問が最重要であることは間違いないですが,QLTSでは入手できなかったので,予備校問題に頼りましたが,これでも一応何とかワークしていたと思います。過去問(アウトプット)で問われる知識にフォーカスしてインプットする,ということです。前田裕二さんの「メモの魔力」にも書いてた(と思います)が,あてもなく穴を掘っても金脈には当たらず,金脈がありそうなところにフォーカスして掘っていく必要がある,ということですね。これも択一・論文ともに。
次は,OSCEについての対策法を書こうと思います!